英語は何歳から始めるのがいいの?

英語は何歳からはじめるのがいいのでしょうか?

 

小さいころからはじめた方がいいのでしょうか?

英語の習得の仕方は、個人差があります。

人によって、だいぶちがいがあるといっていいでしょう。

 

一般的に4歳ごろはとても耳のいい時期です。くわえて、年中さんのころは、

幼稚園や保育園での集団生活にもなれ、先生の言うことを聞いたり質問に答えたり、

日常的な身の回りのことも自分でだいぶできるようになります。

親から少し離れて習い事を始めたりするには適当な時期であるといえます。

 

一方、4歳くらいになると、英語への反応に個々で違いがはっきり出てきます。

興味を引いたものを聞こえたまますぐにまねしようとする子もいれば、

意味がわからないのはいやだ、と皆から少し離れて様子を見てる子など。

もちろん、それははじめの段階での反応であって、少しずつ慣れてくれば、

何かしら抵抗を示していた子も、理解できるものが増え、

そのぶん参加して楽しむ様子もどんどん増えてきます。

 

では、耳がいい、というのはいつごろまでのことでしょう?

音の臨界期(耳で聞いて言語を学ぶのに適した時期)は一説には8歳くらいまで

言われています。いわゆる小学校低学年のころまでです。

このころに九九(かけざん)を覚える、というのは、そういった意味もあるのでしょう。

小学校中学年ごろからは、少しずつ、耳から聞こえたものをそのまま覚える学習ではなく、

頭で考えたり読んで理解したり、抽象的なことを学び始めたり、

そのようにして高学年からは論知的に学んだり思考したりして学習が進んでいきます。

 

では、音に対して高い適性のある、たとえば

小学校1年生から英語をはじめたらどうでしょうか?

そうすればネイティブのような発音が身につくのでしょうか

じつはこれも大きな個人差があるのです

 

2年生になっても。3年生になっても、さらにもっと大きくなってからでも、

聞いた音から美しい発音を再現できる子もいます。

一方で、1年生ではじめても、日本語から影響した発音が長く残る子もいます。

発音面だけでなく、1年生ころになると、英語だけで話しかけられるオールイングリッシュ

に対して、「意味わからない、日本語で言って!」と言う子もいます。

 

では逆にもっと早い時期、たとえば2歳ではどうでしょう?

2歳のころは、まだ日本語の基礎も完成していない時期です。

そのような時期に英語をたくさん話しかけられても、子どもは抵抗を示すことは

まずありません。日本語ですら、理解できないことがとても多いのですから、

英語だからといって、理解できないことをいやがるということはないのです。

2歳のころはじめた子は、日本語を介することなく、よく出てくる表現ややり取りは、

その時の状況から理解するようになります。

つまり、日本語を習得するのととてもよく似たやり方で、ということになります。

 

私の生徒さんの中にも、2歳ごろから英語を始めた子が何人かいます。

今では年長さんや小学校低学年の年齢になっていますが、その子たちに共通しているのは、

私が英語で話しかける内容(基礎的な表現や質問など)を瞬時に理解して

適切な行動をとったり、クラスメートでわからない子がいると、

日本語で説明したりすることができたりします。

ある子は、日本語で話しかけるのと同じように、いろいろなことを英語で聞いてみると、

ごく自然にそれに答えることができるようになっています(答えに必要な単語を知らないとき

は、日本語で答えますが)。

 

では2歳から始めれば、ネイティブの発音が身につくのでしょうか?

実は、日本語で育っている子どもにとって、日本語にはない英語特有の音を自然な形で

聞き分けられる能力は、1歳になる前に消滅してしまう、ということが研究によって

明らかになっています。

生後10か月の赤ちゃんはrとlの音を、ちがう二つの音として聞き分けることができます。

しかし1歳をすぎると、日本語だけで育っている赤ちゃんにとっては、二つの音を聞き分ける

能力は日本語では必要ないため、自然に統合されて、一つの音「ラ」のような音として

認識されるようになるということです。

 

でも赤ちゃんの時に英語を習い始める必要ってあるのでしょうか?

いちがいに赤ちゃんといっても、生後2か月の子と生後10か月の子では、だいぶ発達が

ちがいますが、いずれにしても小さな赤ちゃんはこちらが話しかけた英語を

まねして言ったり、指示したことの内容をやったりはしません。

お母さんに抱っこされて、リズムを感じたり、手を動かしてもらったりしているだけです。

そのような時期に英語を聞いて、覚えることなどあるのでしょうか?

意味あることなのでしょうか?

 

これは、証明されたことではなく私の経験上のことからなのですが、

私は「赤ちゃんの時の学習は十分意味がある」と答えます。

赤ちゃんの能力は、大人の想像以上のものがあります

私は3児の母でもあるのですが、末っ子が赤ちゃんのとき、歌いながらベビーマッサージを

する、というのを、生後10か月くらいまでやってあげていました。

その後すっかりやらなくなってしまいましたが、2歳ごろだったでしょうか、

何気なくマッサージの歌を口ずさんで歌ったところ、その歌とともにやっていたマッサージの

動作を息子が自分で自分の体にやりだしたのです。

「あんなに赤ちゃんだったころのことを、覚えているの!?」と本当に驚きました。

しかも赤ちゃんのときですから、やってあげていたのは私で、息子はなされるがままの状態

でした。赤ちゃんは聞いていないようで聞いている、覚えていないようで覚えている、

びっくりするような能力をもっているのだと思います。

 

私の教えた赤ちゃん生徒さんのことを思い出すと、1歳をすぎる前に、知っている曲には

目の輝きが変わる、リズムを刻みだす、笑顔が急に増える、などの反応が見られました。

明らかに、「これ知ってるよ、覚えてるよ、楽しいよ」と示しているのです。

 

赤ちゃんは3歳くらいまでに、大人といろいろなお話が日本語でできるようになります。

たった3年で、です

私たちは中学3年間英語を勉強して、その年齢に応じた内容を自在に話せるようになったで

しょうか?

いいえ、そんなことはなかったですよね。

ということを考えれば、赤ちゃんの時期の言語学習能力の高さを再評価せざるには

いられません。

 

大きくなってからではおそい?

では、上に書いた時期をとっくに過ぎてしまった人たち、大きくなってからではおそい、

ということでしょうか?

答えは「No」です。学習をはじめるのに、遅すぎるということはまったくありません

小学校高学年になってから、中学生になってから、あるいは大人になってからだって

学習はできるのです。それが人間の脳のすばらしいところです。

 

もちろん、学習に必要な時間や労力の度合い、学習の仕方、到達度には個人個人で

大きな差があります。しかし、適切なやり方・適切な学習法・適切な努力をしていけば、

道具として使えるような英語を身に着けることは可能です。

到達度は、三ツ星レストランのディナーから、一般人の作ったカレーライス程度に

差はあるでしょうが、いずれにしてもおいしくて食べておなかがふくらんで体の栄養になる、

という食事の機能は果たします。

つまり程度の差はあれ、道具として使える英語は、誰でも身に着けることができる可能性

もっているのです。

 

こんな話を聞いたことがあります。日本のあるホームレスの中年男性が、路上生活を

しているのですが、メディアに英語でインタビューされたところ、なかなか流ちょうに

英語で答えていました。どこでそんな英語を勉強したのかと聞かれると、

彼が英語を学んだのは、路上生活のラジオのみからといいます

そのため、聞く話すはできても、読み書きはできない、とのこと。

そんな風にして、大人になってから、限られた方法で英語を話せるようになる人もいる、

ということなのです。

 

私はカナダで5年半ほど住んでいた経験があります。そうすると「じゃあ、英語ペラペラ

だね」とよく言われます。しかし、「どんなことにもペラペラ」なわけがありません。

たとえば経済の仕組みことを専門家に英語で話されても、きっとわからないし、

文化に根差したユーモアなどは、どこが笑うポイントなのか、あまり理解できないでしょう。

人に英語を教えている私だって、今でも英語を学び続けています

つまり言葉の学習にゴールなんてありません

日本語のシチュエーションで考えてみると、見たことのない漢字、意味のわからない熟語、

理解できない難解な文章、日本人の私たちだっていくらでもありますよね。

 

要は、どこまであきらめないで学習を続けたか、どれだけ時間をかけて学んだかが、

その言語をどれくらいできるようになるかと大きく関係しているのです。

 

どんなに小さいころ英語を習い始めても、0歳で始めて2歳でやめてしまえば、

何も具体的に使えるものは残りません(ゼロにもどってしまう、という意味では

ありません)。

先週たくさんご飯を食べたから、このさき食べなくても大丈夫、ということはけっして

ないように、生きていくのとともにあるのが言葉です。

学び続けることでこそ、生きた道具として使えるものになるのだと思います。

 

では結論はなんなの?

年齢が小さければ小さいほど自然なプロセスで習得できます

なだらかなで長い坂を上がっていく感じです。

大きくなってからは、日本語との違いやこれまで身に着けてきた知識、勉強のコツを

生かしながら習得ができます。

あるていど急な坂ではあるけど、目的地に近い登り口を見つけることもできます。

英語を使えるようになりたい、学びたいと思った時がはじめどき、

一番大切なのは、途中であきらめないことです

たとえ中断することがあっても、何度でも学習を再開して、学び続けることです。